2016年も日本の不動産市場の活況は継続

国内外とも経済的には逆風が吹いているものの、日本の不動産セクターへの関心は高まり続けている。日本市場に新たに参入してきた投資家は、借入コストの低さや収益見通しの高さに加えて、最近では世界経済のボラティリティからの安全な逃避先として日本市場に魅力を感じている。

2013年から2015年の商業用不動産直接取引額はこれに先立つ3年間の取引量の2倍以上を記録し、JLLの最新の投資集中度のインデックスに関するレポートによると、引き続き日本はアジアの都市の中で上海に次いで世界の投資家が選好する投資先だ。

JLL日本 キャピタルマーケッツのアソシエイトディレクターであるニコラス・ウィルソンによれば、外国人投資家は「アジアの他の投資先と比較して日本を成熟した安全な市場」と見ている。「資金調達条件が有利で対外純資産が多く、大幅な経常黒字や成熟した流動性の高い金融市場を持つことから日本市場はアジア太平洋地域において非常に安全で確立した投資先と位置付けられている。これに加え、今後数年間にわたり多くのアセットクラスで賃料増加傾向が見込まれるため、日本における収益見通しは同地域内で最も良好である」と分析している。

2016年はプラス成長

ウィルソンはさらに「J-REITやプライベートファンドが今年一年間引き続き積極的に新規資金を投資する見込みだ」とも予測している。「日本の大型投資案件に関心を寄せる中国のデベロッパーや投資家が昨今急増しており、新規外国人投資家も引き続き日本市場へ投資を行うであろう」と述べている。

「日本不動産投資アップデート」によると、2015年外国人投資家による不動産購入額は日本市場全体の22%を占め2007年以来の最高シェアとなった。アーバンランド研究所とプライスウォーターハウスクーパースによる「2016年不動産の新しい動向 アジアパシフィック」レポートにおいて、同地域内で投資家が選好する投資先で東京は3年連続トップ、大阪は第4位となった。

2016年1月に日本銀行は超過準備預金にマイナス金利を適用することを発表し世界の市場にサプライズを与えた。「積み上がっている日銀準備預金の一部がプラスのリターンを求めて不動産ローンと株式市場双方に向かう可能性があり、不動産セクターには非常にポジティブ。新しいローンの組成や既存ローンの延長・増額提案など銀行の積極的な動きがすでに見受けられる」とウィルソンは指摘している。

2020年オリンピック

JLLが発表する「シティ・モメンタム・インデックス」で東京は世界第14位にランクしている。2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックに向けて再開発が進み都市のモメンタムが高まっているためだ。渋谷駅周辺再開発や東京駅隣接の常盤橋街区再開発プロジェクトなどの主要プロジェクトが世界のテクノロジー及び金融センターとしての東京の地位を押し上げることになるだろう。

すでに東京のハイテクセクターは新しい商業用スペースに対する需要をより一層喚起する主因となっており、空室率が非常に低く今後2年間の供給見込みもわずかなことから2016年の東京のオフィス賃料は最も大きな伸び率となる見込みだ。

東京にはフォーチュン誌の発表する世界の企業番付「フォーチュン・グローバル500」にランクインしている企業40社が拠点を置いている。一方ロンドンには18社、ニューヨークには17社が拠点を置き、同地域内では唯一北京が52社で東京を凌いでいる。

JLL日本 取締役 執行役員 マーケッツ事業部長のニール・ヒッチンは、「観光業がリテールセクターの成長を促進し、eコマース企業はロジスティクス分野に投資機会を見出してる」との見方を示す。2015年の訪日者数は前年同期比47%と大幅に増加した。これは主に中国人観光客の増加によるもので、最多の訪日者数を誇った韓国を今や上回っている。

概して中国人観光客は、通常観光客が一回の訪日で費やす消費額の2倍以上、18万円(1,580米ドル)以上もの金額を派手に消費するため、中国人観光客の大幅な増加は小売セクターに大きな恩恵となっている。

ヒッチンは、「観光業は小売市場の成長を促進する強力な原動力であり、小売企業が顧客需要を満たすために事業を拡張しようと新しいスペースを探していることから小売向け賃貸業務が上向いていると指摘する。

小売売上が伸びる一方、活況のeコマースセクターが最先端のロジスティクス施設の需要を押し上げている。中国・米国・英国に次いで日本は第4のeコマース売上を誇る市場で2020年までに約2倍の規模に成長する見込みだ。

「eコマースや関連セクターの企業はより近代的で効率的な施設を探しており、SKU(在庫保管単位)が大きい小型配送品に対応できる高い天井高などの仕様を求めている」とヒッチンは説明する。

高齢化の進展にも関わらず日本の不動産市場は成長モメンタムを増している。「日本を『安全な逃避先』とする見方は当面変わりそうもなく、この状況に後押しされた不動産市場は長期的に安定した成長を維持するであろう