将来を見据えた賃貸オフィス利用のヒント

11月5日, 2015

業務の拡大は、企業にとって喜ぶべき事態。でも新たなスペースを確保するのは頭の痛い問題です。将来の変化にしっかりと備えながら、賃貸オフィスを計画的に利用する秘策はあるのでしょうか。

 あるクライアントが、酒席で披露してくれた逸話です。たった2人で始めた彼の会社は、今や世界で40,000人の従業員を抱える大組織になりました。成長の道程はとても楽しかったものの、その影には相当な苦労もあったことが話しぶりから伝わってきました。

1995年、わずか100㎡の賃貸オフィスから始まったサンフランシスコの本社は、数年後には20階建の自社ビルを持つまでに成長しました。それから何年かが経ち、周囲のすべてのビルを買い取って巨大なキャンパスを作りました。次々と海外へ進出先を広げるのに従い、不動産の確保は大きな課題となってきました。

このように、たくさんの企業が成長のジレンマに直面します。ビジネスの急成長と共に、物理的な社屋も拡張する必要に迫られます。現在の建物にも拡張できる余地がない場合、新しいスペースを賃貸物件で探さないといけないという問題が立ちはだかります。

このジレンマは、東京ではなおさら際立っています。品質の高いオフィス物件が歴史的に見ても少なく、同時に新築物件への競争率が特に高いのが東京の特徴です。このため物件を探し始めてから業務開始までのリードタイムが長くなり、人事チームが長期間にわたる人員の増加を業務開始前から余裕を持って予測しにくくなります。オフィスの設備や改装にかかる高額なコストを考慮に入れると、拡大を続けるビジネスのコストは本当に悩ましい問題になります。

拡張が必要なときに、タイムリーに移転することができない。そんな難問に直面するのを避けるためには、一体どうすればいいのでしょうか?

 

まずは計画を――会社の規模は?

500人や5,000人といった規模の会社になれば、成長のロードマップを見越した長期的な不動産戦略が必要不可欠です。長期的な人員数の予測はどんな会社にとっても難しく、計画も簡単ではないのですが、それでも必要となる不動産の規模、賃貸オフィス物件の相場、入手可能な物件などを把握することで、成長を見据えた場所にオフィスを構え、将来のリスクを軽減させることができます。

 正しいビルを選ぶ

あらかじめ賃貸期間を定めた定期借家契約の新築物件が増えていますが、これはその時々の状況に応じてオフィスを拡張する必要がある会社にとって不都合です。5年や10年の長期で、複数階を利用する大規模なテナントを対象にした新築物件で、期間中に中途解約する権利が制限されているケースもしばしば見受けられます。このような新築物件は、通常最初の賃貸契約から5年以内にテナントが変わることはありませんが、他の大口テナントからの需要が出ればその後の競争は激しくなります。

 同居する他企業の顔ぶれも考慮

入居中のビル内で新規空室が出たとき、優先入居できる特権は、ビル内で最大のテナントに与えられる場合がほとんどです。優先拡張権があっても、ビル内での競争が空室の賃料を押し上げる可能性があり、一定の借り主保護が約束されていない場合に、オフィスの拡張が難しくなります。

 

大家選びは慎重に

小規模な地主は融通が効いて、個々のテナントが入居する際にも対応が速く便利な反面、ビルの大きさや物件のバリエーション不足などのため拡張する際の選択肢が限られてしまう場合もあります。地主は既存のテナントを維持したいと考えるのが自然で、自社所有物件間の移動による移転コスト軽減の提案をすることも珍しくありません。

 成長に合わせてデザイン

オフィスのレイアウトやデザインは、低コストで収容力が上げる必要があります。成長中の会社は、オフィス拡張時の柔軟性を確保できる予備スペースを作っておくことも有効です。例えば、カジュアルなミーティング用スペースを、いざ人員が増えたときにデスクスペースに変えられるよう想定しておく方法もあります。改装が素速くできる機能(上げ床、空調の細かいゾーン区分け、広い敷板)を備えた物件を選ぶことで、拡張時のオフィス再編に有利になります。

 賃貸条件を精査する

優先拡張権と中途解約権があれば、賃貸オフィスの拡大と再編がやりやすくなります。優先拡張権は、空室になった同じビル内のスペースを競合や移転なしで追加使用できるようにする条項です。また、賃貸契約にテナントの中途解約条項を設定すれば、拡大移転が必要な際にも悩む必要はありません。

 再デザインを検討する

オフィスの使用状況を調査して、スタッフがどのようにスペースを活用しているのか把握することにより、スペース効率のよい新しい職場環境を戦略的に作り上げることができます。例えば全員に固定デスクを用意するのではなく、複数スタッフがデスクを共有するホットデスキングを採用することで、20~30%のスペースを節約できます。すべての業種に向いている訳ではありませんが、成長スピードの速いテクノロジー企業、IT企業、大勢の営業スタッフを抱える日本企業などとの相性は良好です。

 結局のところ、将来の成長に備えるには事前によく計画を練ることが大切です。会社の不動産が現在のニーズを満たしているのか、6ヶ月毎に見直すことを習慣化することで、本当に移転や拡張が必要になったときにも、早期に理想のオフィスが手に入れられるようになるのです。