オフィス移転の流れとポイント・効果的なチェックリスト

Submitted by admin on Mon, 07/04/2022 - 09:41
 

オフィス移転は、企業にとって非常に大きな時間・費用・人的リソースのともなう事業です。オフィス移転を成功させるために担当者が事前に考えておくべき重要な4つのポイント効果検証の方法、移転前から当日・移転後までの流れをそれぞれの時期に合わせて使えるチェックリストとともに紹介していきます。オフィス移転時のコスト削減や移転による労働環境改善とロイヤルティ向上など、実際の成功事例も紹介するのでぜひ参考にしてみてください。

オフィス移転までの流れと効果的なチェックリスト

オフィス移転を滞りなく効果的に進めるには、どの時期に何をすればいいのかを明確にし、チェックリスト化しておくことが不可欠です。 以下は、時期ごとに行うべきプロセスと一般的なチェックリストになります。 ぜひ、当ページを印刷をしてご利用ください。

オフィス移転の6ヶ月以上前から必要な準備

オフィスの規模にもよるが、一般的には移転の手続きや作業を本格的に開始するのが6か月前頃と考え、それまでに以下のプランニング作業を進めておく必要があります。

新オフィス

  • 移転の目的を明確化する
  • 移転計画・スケジュールの立案
  • 移転先オフィス選び

チェックリスト

項目 内容 チェック
移転目的の明確化 現状の把握
オフィス移転で達成したい目標設定
  • ブランディング向上、人材確保
  • 賃料などのコストの見直し
  • 分散オフィスの統合
  • 業務拡大などの経営戦略
  • BCP対応、ESGへの取り組み
  • オフィスの立地・環境・設備改善
  • 社員満足度の向上
移転計画・スケジュールの立案 移転にかかる内装・引越し費用を算出
入居中オフィスの解約予告期間、原状回復工事、特約事項などについて現契約書の確認
移転先オフィス選び オフィス市況の把握
オフィス情報収集
適性面積の検証
必要条件に基づいた移転先候補ビル物件選定
移転先候補ビルの内覧等による現地調査
  • ビルスペック(耐震・空調・セキュリティ)
  • 交通、利便施設、管理、駐車場などの設備
移転先候補ビルの契約形態、条件の確認
予算・スケジュール策定

オフィス移転の6ヶ月前に行うこと

移転予定日の6か月前からは、いよいよ実際の契約に向けて交渉や手続きを行います。

新オフィス

  • 賃貸借契約締結
  • オフィスプランニング・レイアウト
項目 内容 チェック
賃貸借契約締結 契約締結に向けての物件交渉
検討依頼書の提出
賃貸借条件の交渉
借室申し込み書の提出
賃貸借契約条文調整
重要事項説明
敷金預託
賃貸借契約の締結
オフィスプランニング・レイアウト 業者選定・依頼
与信整理
新オフィスのデザイン
金額・条件交渉
発注

旧オフィス

  • 解約手続き
  • 移転作業開始
項目 内容 チェック
現オフィスの解約手続き 解約予告の提出(6か月前)
退去条件交渉、スケジュール確認
原状回復工事の手配
オフィス明け渡し日決定
移転作業開始 内容工事、設備工事開始
社員への移転スケジュール広報
梱包・搬出マニュアルの準備
取引先への連絡・プレスリリース
移転案内の発送準備

オフィス移転1ヶ月前~移転後に行うこと

オフィス移転直前から当日、移転後に行うことは以下のようなものが挙げられます。

新オフィス

  • 新オフィス運用ルール広報
項目 内容 チェック
新オフィス運用ルール広報 新オフィス運用ルール広報

旧オフィス

  • 移転後手続き
  • 旧オフィス原状回復
項目 内容 チェック
移転後手続き・旧オフィス原状回復 移転に伴う行政への提出物
法務局(移転登記)
税務署(異動届、給与支払事務所の移転届出)
社会保険事務所(保険適用事業所所在地変更届)
労働基準監督署(労働保険関係成立届、他)
公共職業安定所(雇用保険事業主事業所)
電話の移転手続きなど
郵便局への届け出
原状回復工事完了
旧オフィスとの契約終了・引渡し
敷金・保証金返還(引渡後数か月以内)
オフィス移転の効率的なスケジュール

オフィス移転を進める上で欠かせない4つの戦略ポイント

企業がオフィス移転を考える理由はさまざまだが、かつてのように事業規模拡大や縮小にともなうオフィス面積の問題や設備の老朽化といったハード面だけでなく、より戦略的な視点での移転計画がこれからの時代のトレンドになってゆくと考えられます。次に、移転時に検討・実施すべき要素のなかでも重要な4つの戦略ポイントを解説します。

フレキシブルな働き方に対応したオフィスづくり

2020年のコロナ禍を境にオフィスや働き方のスタンダードは大きく変化しました。今後はアフターコロナ・withコロナの働き方として、出勤と在宅勤務やフリーアドレスなどを併用し、よりフレキシブルなワークスタイルを取り入れる企業が増えていくと考えられます。また日本における少子化問題やジェンダーギャップ解消は喫緊の課題であり、男女を問わず育休や時短勤務・企業内託児所などが活用できる働き方の浸透が社会全体で求められています。移転後に自社がどのような勤務体制を取るのか、そのためにはどのようなオフィス構築が必要なのかを長期的に見据えたプランニングが不可欠です。

企業ブランディングを考慮したオフィスコンセプト策定

顧客に選ばれ第一想起される企業には確固たるブランドイメージが存在します。オフィスのコンセプトを明確にすることで、クライアント・パートナーなど外部に向けてのブランディング効果が期待できます。また、少子高齢化社会において人材採用と確保は今後ますます厳しくなることが予想されるなか、適切なオフィスコンセプトの設定と実施・発信を行うことにより、自社の理念とマッチした人材を採用できる可能性もより高まっていきます。

目的に沿ったオフィスタイプの選定

オフィス移転の大きな効果・目的の1つにコスト削減が挙げられ、最適なオフィスタイプの選定により、事業規模や人件費に影響を与えずコスト削減が実現します。全従業員の出勤を前提としたコアオフィスの固定観念を取り除き、都心または郊外のシェアオフィスの活用、内装工事や什器家具が備え付けのセットアップオフィスや、前入居者が設備を残した居抜き物件を利用して移転初期費用を抑える方法なども含めて検討することで、移転後のコスト最適化が可能となるでしょう。

移転後の課題解決効果の検証

オフィス移転は、それ自体ではなく移転によって自社の抱える課題を解決することが目的です。例えば、移転後に企業のコンセプトに合ったオフィス環境や働き方が実現し従業員のパフォーマンスやロイヤルティが向上する、コストが削減できてビジネスの成長に寄与する……といった効果が得られなければいけません。そのために欠かせないのが効果の検証です。社員へのヒアリングといったソフト面での検証に加え、オフィスの利用率を可視化するテクノロジーツールもより明確な数値を導き出すために有効です。

オフィス移転の成功事例

オフィス移転のチェックリストを活用した新オフィスイメージ

居抜き物件によってコスト削減に成功したオフィス移転事例

リーガルテックサービスを提供するL社は、2021年に東京・日比谷から豊洲へ本社オフィスを移転しました。同社の手がけるソフトウェア研究開発ニーズの高まりに合わせ、希望条件(都心に近い立地・ワンフロア)に合わせキャパシティ拡張が可能な物件として、希少な大区画の居抜き物件を確保することで大幅なコスト削減に成功しています。

人材確保や従業員の帰属意識を改善したオフィス構築の事例

法人向けITソリューション開発提供を行うN社は、7フロアに分散するオフィスを移転統合し、社員の誇りとなる魅力的なオフィス構築を実現しました。コロナ禍により発生したさらなる課題によりプロジェクトの変更を余儀なくされましたが、安全なオフィス環境やテレワークが可能なシステム整備を推進し、最終的に当初想定予算の4割減にて期間内の移転を完了。一体感や帰属意識から生まれるイノベーション創出や人材確保と長期雇用につながるオフィス構築に成功しています。