フリーアドレスは固定席のない、従業員が自由に座席を選べるオフィススタイル。ハイブリッドワークとの相性が良く、コミュニケーション活性化やコスト削減に効果的。本記事ではメリット、デメリット、後悔しないポイントを解説。
フリーアドレスとは、オフィスに固定席を設けず、従業員が自由に座席を選べるスタイルのことです。近年、テレワーク・リモートワークとオフィス勤務を融合した「ハイブリッドワーク」を導入する企業が増えていますが、ハイブリッドワークと相性が良いのがフリーアドレスであり、コミュニケーションの活性化やコスト削減につながる手法としても注目を集めています。本記事では、フリーアドレスのメリット・デメリットや失敗しないポイント、導入事例などをまとめています。
フリーアドレスとは、オフィスに固定席を設けず、従業員が自由に座る場所を選べるスタイル のことです。フリーアドレスを導入することで、従業員はその日の業務内容や気分に合わせて、働きやすい場所を選べます。これにより、日々新しい気持ちで仕事に取り組めるようになり、集中力やモチベーションの向上につながるほか、異なる部署間のコミュニケーションが促されることで問題解決の促進やイノベーションの創出も期待できます。
また、フリーアドレスはオフィススペースの効率的な利用を可能にします。近年、ハイブリッドワークを導入する企業が増えていますが、ハイブリッドワークを導入するとオフィスに出社する従業員の割合が減り、従業員の顔ぶれも毎日変わってきます。そのため、ハイブリッドワークの導入と同時にフリーアドレスを導入する企業も少なくありません。
フリーアドレスのメリットとしてよく言われるのが、以下の4点です。
組織内での交流が活発になる | フリーアドレスのメリットの一つが、組織内のコミュニケーション・交流が活発になる ことです。フリーアドレスを導入すると、いつもと違う人と隣り合わせになって仕事をする機会が増えます。これにより、コミュニケーションの範囲が広がり、部門を超えた情報共有や連携・協力が生まれやすくなります。また、異なる視点・立場の従業員同士が意見交換をすることで、問題解決が促進されたり、イノベーションが創出 されたりといった効果も期待できます。 |
オフィススペースを有効活用できる | フリーアドレスを導入し、固定席を廃止することで座席が空いている時間が減り、オフィスのスペースを有効に活用できるように なります。たとえば、外出している従業員や在宅勤務をしている従業員が多いオフィスでは、使われていないデスクを減らして、空いたスペースにミーティングエリアやリフレッシュスペース、集中ブースなどを設けることができます。テレワーク・リモートワークやハイブリッドワーク、フレックスタイム制など、多様な働き方に対応しやすい のもフリーアドレスのメリットだと言えるでしょう。 |
従業員の生産性向上につながる | フレキシブルな働き方を実現できるフリーアドレスは、従業員にリフレッシュ効果 をもたらします。従業員は、その日の気分に合わせて自由に座る席を決められるため、毎日新しい気持ちで仕事に臨むことができ、集中力やモチベーションの向上が期待できます。また、柔軟にレイアウトを変更できるフリーアドレスなら、プロジェクトチーム単位で集まって仕事をすることも可能です。業務内容に合わせて最適な場所を選べるため、組織全体の業務効率を高め、生産性向上を図る ことができます。 |
コスト削減につながる | 従来のように、一人ひとりの従業員に固定席を割り振る場合、オフィス全体として広めのスペースが必要でした。しかし、フリーアドレスを導入すれば固定席を削減・廃止できるため、オフィススペースの効率的な利用が可能に なります。たとえば、個人のデスクの数を減らすことでフロアを縮小できれば、賃料や光熱費の負担を軽減 することができます。また、テレワーク・リモートワークやハイブリッドワークを導入している企業であれば、小規模なオフィスに移転してフリーアドレス化することで大幅なコスト削減を実現 できるでしょう。 |
フリーアドレスのデメリットとしてよく言われるのが、以下の4点です。
座席や同僚を探すのに | オフィスがフリーアドレスになると、従業員によってはストレスを感じる 場合もあります。たとえば、出勤したときに空いている席を見つけるためにオフィス内を歩き回ったり、同僚・上司と直接話をしたいときに探し回ったりするのはストレスになるほか、時間も無駄になります。ただ、座席予約システムやリアルタイムで座席状況を確認できるシステムを導入 することで、こうしたデメリットは軽減することができるはずです。 |
書類や持ち物の管理が難しい | フリーアドレスのデメリットの一つとして、書類や持ち物の管理が煩わしくなる ことが挙げられます。従来のような固定席であれば、従業員は書類や私物をデスクの上や引き出しの中に入れておくことができますが、フリーアドレスになるとそれができなくなり、毎日、自分で持ち運ばなければいけません。こうした手間を軽減するためには、個人用ロッカーを設置する、あるいはペーパーレス化を推進 するのがおすすめです。特に、ペーパーレス化は業務効率化を図るうえでも重要な取り組みです。 |
ワーカー個々の既得権益の喪失 | フリーアドレスを導入することで、従業員によっては、既得権益を喪失したように感じる 可能性があります。従来のオフィスであれば、従業員は入社するのと同時に自分専用の固定席が与えられます。しかし、フリーアドレスにすることで自分専用のデスクやパーソナルスペースが失われることになります。その際に、「自分の場所が奪われた」「居場所がない」などと感じる従業員もいるようです。こうした喪失感は、個人用ロッカーを設置したり、定期的に固定席で働く日を設けたりすることで、ある程度は解消 できるでしょう。 |
職種によっては固定席のほうが | 「固定席のほうが、仕事がはかどる」という従業員にとっては、フリーアドレスの導入がデメリットになってしまう可能性があります。たとえば、ITエンジニアやデザイナーなど、ハイスペックのデスクトップPCやデュアルモニターが必要な職種 の場合、フリーアドレスになると環境設定などの準備に時間がかかり、生産性が低下してしまうことがあります。企業によっては、フリーアドレスと固定席をハイブリッドで運用するなど、職種ごとのニーズに合わせたオフィススタイル を検討する必要があるでしょう。 |
フリーアドレスの導入で失敗しないために、以下のポイントを押さえておきましょう。
フリーアドレスを導入するにあたっては、オフィスのどこにいても仕事ができる環境づくりが求められますが、その際に障壁になるのが「紙」の書類です。業務フローが紙ベースになっている企業は、できるだけペーパーレス化を進めるようにしましょう。たとえば、書類をデジタル化してクラウドストレージに保管すれば、いつでもどこからでも閲覧・編集ができ、どこに座っている従業員とでも簡単に情報共有ができるようになります。また、電子決裁システムを導入し、決済・承認のプロセスから紙を排除するのもおすすめです。
フリーアドレスを円滑に運用するためには、従業員がスムーズに座席を確保できるようにする必要があります。そのために導入したいのが、座席予約システムです。システム上で事前に座席を予約できるようにすることでスムーズな運用が可能になります。また、リアルタイムで座席状況を確認できるシステムもおすすめです。直接声をかけたい同僚や、相談したい上司がどこにいるのかを探す手間が省け、効率的にコミュニケーションを図ることができます。
固定席のオフィスでは、デスクごとに固定電話があり、内線通話や外線の取り次ぎをするのが一般的です。しかし、フリーアドレス化する場合、こうした電話対応が難しくなるため、別の方法を考えなければいけません。一つの選択肢が、デジタルコードレス電話機の導入です。デジタルコードレス電話機は、オフィス内の電波の届く範囲ならどこでも内線通話や保留・転送などの対応ができます。また、スマートフォンを内線電話として使う方法も一般的になっています。
固定席のオフィスでは、ノートPCや書類、私物などはすべて自分のデスクの上や引き出しの中に置いておくことができました。しかし、フリーアドレスにすると個人専用のスペースがなくなるため、持ち物の置き場に困るようになります。そのため、個人用ロッカーの設置が不可欠です。ノートPCや周辺機器、書類や私物などを収納できるサイズのロッカーを用意しましょう。個人用ロッカーがあれば、書類を持ち運んだり、私物を持ち帰ったりする手間がかからないだけでなく、セキュリティ面でも安心です。
フリーアドレスを円滑に運用するためには、ルールやガイドラインを明確にして、全従業員に周知・徹底を図ることが重要です。たとえば、座席の予約方法や私物の置き場所、電話対応などのルールは策定するべきです。私語や飲食、清掃などのマナーについても一定の規定を設けたほうが良いでしょう。運用開始後も定期的に従業員からフィードバックをもらい、ルール・ガイドラインを改定しながら、誰もが快適に働けるフリーアドレス環境を構築していきましょう。
S社は、テレワーク環境の整備を段階的に進めていきましたが、その最初のステップが、オフィス内のフリーアドレス化でした。従来、各個人の書類を格納する役割として机の傍にキャビネットがありましたが、それをオフィスの1箇所にまとめ、必要な書類や資料はそこに保管するようにしました。また、フリーアドレス化しても、結果的に座席が固定化されてしまう可能性があったため、当日の座席はくじ引きで決めることにしました。そうすることで、毎日違う人と隣り合わせになり、新しい視点・発想が生まれるようになりました。
M社は、従業員の意識改革と退勤しやすい雰囲気作りとより高いパフォーマンスを発揮する手段の一つとして、各従業員のワークスタイル(自席での作業が多いか少ないか、個人で進める業務が多いか、社内外と調整しつつ進める業務が多いかなど)を可能な限り正確に把握したうえで、フリーアドレスを導入しました。フリーアドレス化と同時に袖机を無くし、個人用ロッカーを用意し、PCや必要最小限の紙資料はそこに保管することにしました。併せて、一部の従業員は固定電話を廃止し、各人に貸与するスマートフォンに内線番号を割り当てるなど、環境整備を進めました。
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企業がフリーアドレスを導入することで、従業員のモチベーションアップや社内のコミュニケーション活性化につながるほか、オフィススペースの効率的な利用が可能になります。
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