オフィス移転は、増員による拡張、コスト削減、リクルーティングの為の立地改善、近年ではグリーンビルディングによる環境、社会、ガバナンス(ESG)への配慮、従業員のウエルネスの向上など、いくつもの多様な動機に基づきます。企業の目的を実現する為のオフィス移転をする際に参考となる、主要エリアの賃貸オフィスの賃料相場と動向について解説致します。
賃貸オフィスの賃料を見る上でのポイントとは?
賃貸オフィスの賃料は、竣工年・立地・規模等の条件が、竣工が新しい→古い、駅から近い→遠い、規模が大きい→小さいと、個別差はあるものの、賃料が高い→低いと比例します。
また、オフィスの賃料相場はオフィス空室率のマーケットによって変動します。需要と供給バランスで空室率が高くなれば、賃料は下落傾向になります。近年では、セットアップオフィスや環境に配慮したグリーンビルディング等の、テナントのニーズに合った付加価値のある賃貸オフィスが増加しています。付加価値のある賃貸オフィスは、同等の条件の通常のオフィスと比較した場合、若干賃料が高い傾向がみられますが、結果としてコスト削減効果やサステナビリティに対応する事によるメリットに結びつきます。
東京エリアのオフィス賃貸相場と動向
都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)の2023年第2四半期の東京Aグレードオフィス市場における賃料は月額坪当たり33,923円となり、前期比1.1%の下落、前年比4.2%の下落となった。
下落は13四半期連続。下落ペースはほぼ前期並みとなったが、サブマーケット別にみると、大手町・丸の内、赤坂・六本木において賃料は低下した。
空室率は4.8%となり、前期比0.6ポイントの上昇、前年比1.4ポイントの上昇となった。こちらは2四半期連続の上昇となり、大型の新規供給ビルに残る空室が影響している。サブマーケット別でみると、赤坂・六本木の空室が急上昇した。
2023年下半期においては、最大級の新規供給が今期竣工したことから、賃貸市場の活動はやや減速するとみている。需要を上回る余剰の供給により空室率は上昇し、引き続き賃料には下押し圧力が加えられると予想される。
東京トレンド・お勧めエリア
東京駅の八重洲口から日本橋にかけて、今年竣工した八重洲ミッドタウンを中心に再開発されます。
今後2027年にかけて、大規模な再開発が続きますが、新築ビルの賃料は八重洲エリアでは5万円程度と、同じ東京駅を最寄駅とする、駅の反対側の丸の内エリアと比較すると安価です。八重洲エリアは東京の玄関口として、日本全国につながる新幹線をはじめ、JR、地下鉄、バスなどのターミナル拠点の交通利便性に優れています。八重洲ミットタウンの様な、オフィス・商業施設・ホテル・小学校等のミクストユースな大規模複合再開ビルが竣工する事によって、オフィスワーカーが仕事をするだけの場所としての魅力も豊富です。食事を楽しむ人や寛ぐ人など様々な街との付き合いが生まれ 日本橋界隈の歴史と融合された新たな魅力を作り、ますます活気のある街に生まれ変わります。八重洲・日本橋界隈は街の競争力アップにより、賃貸オフィスビルの賃料は維持していくと思われます。
大阪エリアのオフィス賃貸相場と動向
都心2区(中央区・北区)の2023年第2四半期末時点の賃料は月額坪あたり22,374円となり、前期比0.2%の下落、前年比2.2%の下落となった。 早期に空室を消化したい意向のビルの一部で賃料を引き下げる動きがみられた。
空室率は3.4%となり、前期比横ばい、前年同期比0.1ポイントの低下となった。テナントの動きは活発になってきており、空室を消化するビルが増えている一方、まとまった空室が発生したビルがあり、空室率は横ばいにとどまった。
2023年の新規供給は上半期に出尽くし、年内の空室率は緩やかな上昇、賃料も緩やかな下落にとどまる。しかし、2024年以降、再び増加する新規供給によって空室率の上昇、賃料下落が加速することが予想される。
大阪トレンド・お勧めエリア
淀屋橋から本町界隈の御堂筋沿いにかけて、既存の高さ規制が撤廃されて、超高層ビルが建てられるようになりました。また、2022年以降に順次竣工する新築物件の供給に伴い1,000坪以上の大型の面積を有する企業の選択肢が増えました。これによる、 本町界隈の企業の従業員のウエルネスやサスティナビリティのニーズに合わせた、自社ビルの売却による移転や、再開発により、御堂筋沿いのエリアでは、今後2025年にかけて新規供給が続きます。 再開発で供給される大規模な新築ビルでは、テナントのニーズに応えて差別化を図るために、カフェやフリースペース働く場所を自由に選べるABW(Activity Based Working)の導入や、シェアオフィス・コワーキングスペースの標準化などを採用しています。現在、 これらの御堂筋沿いの新築ビルは、梅田エリアの新築ビルと比較して、価格は抑えられている傾向があります。
福岡エリアのオフィス賃貸相場と動向
2023年第2四半期の福岡Aグレードオフィス市場の賃料は月額坪当たり19,825円となり、前期比0.1%の下落、前年比3.3%の上昇となった。総じてみれば下落となったものの、高い稼働率を背景に、既存物件は一部で賃料の引き上げを実施した。
空室率は8.0%となり、前期比1.3ポイントの上昇、前年比5.8ポイントの上昇となった。JLL統計開始以来4番目に高い水準となった。新築ビルの一部がテナント誘致活動を継続してるものの、既存ビルの空室率は依然低い水準であった。
2023年の新規供給は完了したため、年末にかけて空室率は低下するとみられるが、2024年は大型の新規供給が予定されていることから再び上昇する見通しである。
福岡トレンド・お勧めエリア
福岡では天神のみならず、博多駅周辺エリアにも再開発が進み、オフィスマーケットエリアが大きくなりました。マーケットが大きくなっても、博多駅周辺エリアの博多駅徒歩5分圏内や、天神エリアは継続して人気があります。新築や築浅の賃貸オフィスでは、天神エリアの賃料が他のエリアと比較した場合、若干高い傾向にあり、トップビルでは30,000円/坪程度のオフィスビルもありますが、どのエリアも既存ビルは新築ビルに牽引されるように、賃料の横ばいから一部ビルでは上昇傾向も見られております。人の集客などが必要な企業は天神エリアを、JRや福岡空港までの利便性の良さと、商業性の高い天神地区では確保が難しい駐車場も、エリアよっては確保対応可能な博多地区は機動力を重視される企業へ、ニーズに応じた物件の検討は可能です。
Property Clock
主要都市の賃料動向を時計に見立てて「見える化」したJLL独自の市場分析ツールで、四半期ごとに発表しています。 賃料が概ね①賃料下落の加速、②賃料下落の減速(→底入れ)、③賃料上昇の加速、④賃料上昇の減速(→頭打ち)、というサイクルで変動することを前提とし、現在の賃料がそのサイクルのどこに位置するかを表示することで、賃料サイクルを示しています。